2017M-1グランプリ

 ☆ゆにばーす
 異形・異声の無謀な"女"攻勢に、怜悧な印象のツッコミが振り回される、小籔干豊―山田花子ラインのパターン。山田が抜けているのに対し、こちらの「はら」は危ない女っぷりをまき散らす。何といってもそのインパクトは独特かつ強力で、様々なバリエーションのネタが期待できそうだが、決勝ではいま一つ驚きのない月並みなレベルにとどまっていた。ネタ作り担当の尖りキャラの川瀬が、素材を今後どう開発していくか?テレビ消費に落ち着いてしまうか?先行きにやや懸念。

  ☆さや香
 浅いキャリアの割に基本がしっかりした印象。スマートだが底の浅さは感じず、伸びしろ十分といったところ。ただ、上沼恵美子も指摘した通り漫才でない方向でも上手くいきそうで、そちらに行ってしまう可能性もある。

 ☆マヂカルラブリー
 とりあえず話芸を競う場でコント、それも構成もツッコミも甘い中途半端なコントをやったのだから、酷評も当然。他のネタを知らないが、若者に受けるという要素が理解できない。「よう決勝に残れたな」という上沼の言葉を支持したい。

 ☆スーパーマラドーナ
 よくやっていると思う。前回採り入れた一人二役(あるいは三役)芝居にもう一人がツッコミを入れる体裁は斬新で成功したが、今回は直接的な掛け合いも少し織り込み、さらに熟成を図ろうとする意欲が感じられた。とりわけ頼りない田中の進境が著しい。
 ただ、これ以上の伸びしろとなると首を傾げてしまう。ツッコミの腕も手堅い武智の柄がアクが強すぎて、どうしても笑いの開放を妨げるのだ。では、どうする?
 ここはひとつ、田中の進境に乗って「強面・ヘタレ」の力関係に変化をつけてみてはどうか。たまに田中が正論で反駁したり、キレたり、これに対して武智がちょっとたじろいだり、感心したり。無論、図に乗ると本来の強権発動に至るオチやメリハリも付けて。芝居ツッコミでもオーソドックスな相対でもどちらにも織り込んで、二人の位置関係に深みを持たせていく中で、どうしても圧迫感の強い武智のキャラクターが幅を広げていくようなら、まだ先はある。

 ☆ミキ
 兄弟コンビの息の合った良い部分が出て、キャリア数年にしては達者すぎるぐらいだが、時として二人の台詞が必要以上に被り、兄昴生の声や口調の特性もあって聞きづらい。がなり合いもアクセントとしてはよいが、度重なると興を削ぐ。当面は勢いとテンポ、味わいはまだまだ先の、これからのコンビ。

 ☆カミナリ
 見たことのある「動物で何が一番強い」ネタを出してきた。先輩のサンドウイッチマン同様、来る仕事を選別しない姿勢は評価するが、忙しすぎてネタに新味がなくなっていくのは辛い。
 そういう意味からも「どづきはいらん」という上沼の指摘は至言である。どづき嫌いで辛い点を付けてから1年。
この同級生コンビの独特な持ち味を評価したのだろう。最早、間合いと強烈さが売りの「坊主頭、バシッ」のインパクトも薄らいだ。このままでは頭打ちは見えている。ほかに何もないコンビなら、どづきのバリエーションに活路を見出すほかないが、彼らにはそれぞれ個性的で対照的なキャラクターと、幼馴染ゆえの独特のコンビネーションという持ち味がある。それを生かしていくべきだと上沼は言いたかったのだと思う。

 ☆ジャルジャル
 なにしろ器用で、小ネタ的にせよ色々な芸を繰り出してくる。今回は器用にこなすだけでなく、上げたハードルに見合う相当な練習を積んで、その一芸だけで高みに到達しようという意欲が伝わってきた。
 その面白さと難しさは反復を繰り返すほどに増幅するのだが、その分、ネタ全体の流れとしては単調となってしまう。彼らは敢えてそうして、高いレベルをクリアした。ただそこで生み出されたのは笑いというよりは、難しい言葉遊びをやり切ったことに対する称賛だったと思う。芸として一流だったが、話芸・お笑い芸としてはどうだったのか?最後は難問を無事クリアできたことをオチにしたが、ネタの流れとしてメリハリやオチを盛り込む余地はなかったのか?福徳の精魂尽きて結果に落胆する姿を見て、考えさせられるところではあった。

 ☆かまいたち
 彼らのファンだという小朝は或いは、とりわけ濱家に落語家的な「フラ」を認めているのだろうか?
 今回、シチュエーション抜きの完全なしゃべくりで勝負してきた彼らだが、怖い話というネタがプログラムネタの中の一つという印象で野心希薄。ボケも「花子さんのさんは、数字の3?」「トイレに引きずり込まれてどうなるの。気まずい顔を見合わせる?」等々それなりではあったが、新味に乏しく予定調和的。濱家のツッコミは普段以上にハイテンションの部分があったが、がなりが少々聞き辛かった。地味ではあるが準決勝で掛けた少しのんびり目のネタが合っているような気もがする。
 ともあれ今回、ツッコミスタイルの屁理屈でボケる山内に対し、気色ばんで話の本筋にこだわる濱家が、間違ったことは言っていないのにボケているような印象を醸した点を私は、Wボケ・Wツッコミの萌芽とすべきだと受け取った。彼らにとっては既に新味のない試みかもしれないが、Wボケ・Wツッコミが彼らがさらに上に行くステップというのが持論である。
 しかし、ライバルと目すべき和牛は先を行っている。決勝本戦ネタでツッコミ役川西の素晴らしいボケっぷりが爆笑を呼んでいるのだ。漫才においては向う一年、精進の道は険しい。

 ☆和牛
 決戦で敗れた際の意外そうな不本意極まりなげな二人の表情に、自信満々だったことが見て取れた。修練とネタ作りがそれだけのものだったのだろう。
 実際、決勝本戦では彼らのネタが最高の出来だった。前半の種蒔き部分は地味だったが、水田がウエディングプランナーから二役目の新郎に切り替わり、実際の結婚式で一つひとつのボケの回収段階に入るや俄然盛り上がり、乗りとリズムが絶妙の川西のスティーブ・ジョブズボケが炸裂するに及んで最高潮に達した。一本勝負であれば、文句なしに彼らの勝利だったろう。
 しかし、やむを得ないことではあるのだが、1本目があまりに良い出来だっただけに、2本目との落差が目立ったのもまた事実。得意とする煩い客と振り回される店員のパターンだが、互いの論理を同時に言い募り結局仲居の川西がいやいや折れるやり取り場面の繰り返しも少々煩わしかったし、なにより同じ川西が女性に扮するシチュエーションとはいいながら、この客と仲居の方がコント色、作り物設定色が強かった点がマイナスだったのではと思う。と言いつつ、それでも彼らの優勝かなと思っていたのだが。
 実力に折り紙付きとはいえ、今回の1本目を凌ぐネタを来年作り上げてくるのは容易ではあるまい。こちらも平坦とはいかない一年となるかもしれない。

 ☆とろサーモン
 重複するが、彼ら贔屓の私にも優勝は和牛かと思われた。ネタはどれも好きだが、出来だけとらえれば「メリークリスマス」が大うけした前回大会の敗者復活戦の方が良かったように思えた。だから、優勝するなら去年だったかなと考えたりもしていた。
 けれどもこの日、久保田の奔放さが薄らぎ、ややよそ行き感と緊張感があったものの、彼らの才と技量にそぐわない出来ではなかった。好き嫌いの分かれる芸風だろうが、相方の村田共々漫才師として高い水準にあることはかなりの程度分かってもらえたのではなかろうか。その点でこの優勝は違和感もないし、喜ぶべきことと思っている。
                                                          (敬称略)

 

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